急冷式は溶ける氷まで水として数える淹れ方です
濃く淹れたコーヒーに溶けた氷の水が加わって、ちょうどよい濃さになるように量を逆算します。
ホットと同じ分量で淹れて氷に注ぐと、溶けた氷のぶんだけ薄くなります。急冷式では、この薄まりを最初から計算に入れ、濃いめに淹れておきます。
基準になるのはホットの分量です。メリタジャパンのペーパードリップの目安では、1杯分は125ccです。それに使う湯は140ccで、粉は約8gです。
急冷式では、波佐見焼の一つ穴フィルターを使うときの目安として、メリタジャパンは中細挽きの粉16gを示しています。湯は140mlです。粉はホットの2杯分なのに、湯は1杯分のまま。これがメリタの言う「お湯の量をいつもの半分にして濃く抽出する」の中身です。
| 項目 | ホット(メリタ一つ穴式) | 急冷式(メリタ波佐見焼一つ穴フィルター) |
|---|---|---|
| 粉 | 約8g | 16g(中細挽き・メジャースプーンすりきり2杯) |
| 湯 | 140cc | 140ml |
| 氷 | 使わない | 140g程度をサーバーに入れる |
| 蒸らし | 粉と同量程度の湯で20〜30秒 | 30秒程度 |
湯と氷が同じ数字になっているのは、溶けた氷で抽出液を割る前提で量を組んでいるからだと考えられます(メリタが理由を書いているわけではなく、数字から読み取った推定です)。どちらにしても、急冷式では氷も水の一部として量ると覚えておくと、分量を自分で変えるときにも迷いません。
道具はいつものドリップセットに氷とスケールを足すだけです
特別な器具は要りません。氷も重さで量れるよう、スケールがあると味が安定します。
ドリッパー、ペーパーフィルター、サーバー、ケトルがあれば淹れられます。足すのは氷と、粉・湯・氷を量るスケールくらいです。
サーバーは耐熱のものを使います。冷えた氷の上に熱いコーヒーが落ちるので、急な温度差に弱い器は避けたほうが安心です。
急冷式ハンドドリップの手順
氷をサーバーに入れておき、蒸らしと注湯を終えたら、ドリッパーから氷の上へ直接落とします。
分量はメリタ波佐見焼一つ穴フィルターの目安です。
- サーバーに氷を入れます。メリタの目安は140g程度です。
- 中細挽きの粉を16g量ります。メジャースプーンなら、すりきり2杯です。
- ドリッパーにペーパーをセットして粉を入れ、軽くゆすって表面を平らにします。
- 粉と同量程度の湯を全体にかけ、30秒程度蒸らします。
- 残りの湯を、中心から小さく円を描くように注ぎます。注ぐ湯は合計で140mlです。
- 落ちきったらドリッパーを外し、サーバーを軽く回して氷と混ぜます。
- 氷を入れたグラスに注ぎます。
氷を先に入れておくのは、熱いまま置く時間をなくすためです
コーヒーが熱いまま冷めていく時間を作らないように、落ちた瞬間に氷に当てます。
メリタジャパンは、コーヒーメーカーで淹れる急冷式について、抽出直後に氷で冷やすと香りが立ちやすく、高温のまま置いて冷ますと風味が落ちると説明しています。ハンドドリップでも、落ちた先に氷があれば熱いまま置かれる時間がほぼなくなります。淹れ終えてから氷を足す順番にすると、この利点が消えてしまいます。
つまずきやすいのは、湯の量をいつもの感覚で注いでしまうところです
湯を半分にするのが急冷式の要なので、手の感覚に頼らずスケールの数字を見ながら注ぎます。
ホットを淹れ慣れている人ほど、いつもの量まで手が動きがちです。湯が多すぎると濃く出すという前提が崩れ、氷が溶けたあとに薄い一杯になります。サーバーごとスケールに載せ、表示を見ながら注ぐと防げます。氷が入っているぶん、最初の表示は氷の重さです。注ぐ前に0に戻しておくと、湯の量だけを読めます。
蒸らしの湯量や、粉の膨らみ方の見方は蒸らしのガイドで詳しく扱っています。
味がぶれたら、量を確かめてから挽き目を変えます
薄い、ぬるい、香りが弱いといった症状の多くは、量の計り方か落とす先の問題です。
量がずれたまま挽き目を変えても、何が効いたのか分からなくなります。まず湯と氷の量を目安に戻し、それでも好みと違うときに挽き目を動かす順番がおすすめです。
| 症状 | まず疑う所 | 次に変えること |
|---|---|---|
| 薄い・水っぽい | 湯を半分に減らしていない、氷を入れすぎた | 湯をスケールで量り、氷を目安の量に戻す |
| ぬるい・氷がすぐ消えた | サーバーの氷が少ない | 氷を目安の量まで増やす |
| 香りが弱い | 淹れてから氷を足した | 氷を先に入れ、直接落とす |
| 苦みや渋みが強い | 挽き目が細かすぎる | 中細挽きより少し粗くして、好みで調整 |
| 濃すぎる | 好みより濃く出ている | グラスの氷で割るか、粉を少し減らす |
薄いときは、まず湯の量を疑ってください。粉を増やすより先に、湯が半分になっているかを見たほうが早く直ります。
メリタ以外のドリッパーでも考え方は使えます
湯を減らして濃く出し、氷へ直接落とす考え方は共通です。ただし、上の数値はメリタ用です。
円錐形のドリッパーやケメックスでも、急冷式の考え方はそのまま使えます。ただ、この記事の分量はメリタの波佐見焼一つ穴フィルター向けで、ほかの器具に向けた公式の数値ではありません。ほかの器具では、メリタの目安を出発点にして、好みで詰めていきます。
たとえばケメックスの公式案内は、ホットの淹れ方として中粗挽きと約30秒の蒸らしを示していますが、急冷式の分量は載せていません。普段の挽き目と蒸らしはそのままにして、湯を減らすところだけ急冷式に変えると、比べやすくなります。
急冷式か水出しかは、飲みたいタイミングで決めます
すぐ飲みたいなら急冷式、前の晩から仕込めるなら水出しが向いています。
同じアイスコーヒーでも、急冷式と水出しでは準備の仕方がまったく違います。
| 項目 | 急冷式 | 水出し |
|---|---|---|
| 飲めるまで | 淹れてすぐ | 長い時間かけて抽出 |
| 使う道具 | いつものドリッパーと氷 | 水出し用のポットやボトル |
| 量の調整 | 一杯ずつ変えられる | 仕込んだ量をまとめて飲む |
| 向く場面 | 思い立ったときの一杯 | 作り置きして数回に分けて飲む |
迷うなら、急冷式から始めるのが手軽です。道具は手元にそろっていて、一杯ごとに湯量や挽き目を試せるので、自分の好みの濃さを早くつかめます。作り置きしたくなったら、水出しの作り方も試してみてください。
まず目安どおりに淹れ、変える項目は毎回ひとつにしぼります
目安の分量で基準の味を作っておくと、次に何を変えればいいかを判断しやすくなります。
次にすることは、メリタの目安(中細挽きの粉16g、湯140ml、氷140g程度)で一杯淹れてみることです。そのうえで薄ければ湯、苦ければ挽き目、と変える項目をひとつずつにしぼります。同時に二つ動かすと、どちらが効いたのか分からなくなります。
粉と湯の比率そのものの考え方は、豆と湯の量の決め方にまとめています。急冷式の分量を自分の器具に合わせて組み直すときの参考になります。
