量は「比率」をひとつ決めて、杯数に合わせて増減させます
粉と湯を別々に決めず、ふたつの比率を固定すると味がそろいます。
コーヒーの濃さは、粉の量だけでも湯の量だけでも決まりません。粉に対して湯をどれだけ注いだかで決まります。粉をスプーンで量り、湯は「カップのこのあたりまで」と目で見て決めていると、日によって比率が変わり、濃さもぶれます。
比率を決めておけば、1杯でもマグカップいっぱいでも考え方は同じです。粉を倍にしたら湯も倍にします。粉を少し減らしたら、湯も同じ割合で減らします。
この記事では、比率の具体的なグラム数を挙げていません。目安はメーカーや器具ごとに違い、どれかの数字を載せても、お使いの器具に合うとは限らないからです。代わりに、自分の器具の目安を見つけて調整する手順を書きます。
最初の比率は、使っている器具の公式目安から借ります
出発点は自己流で作らず、ドリッパーやプレスの説明書にある目安を使います。
最初の比率は、器具のメーカーが出している目安をそのまま使うのが近道です。ドリッパーの箱や説明書、メーカーの公式サイトには、杯数ごとの粉の量とできあがりの量が載っていることが多く、付属の計量スプーンもその目安に合わせて作られています。
メーカーの目安は、その器具の穴の大きさや湯の抜け方を前提に決められています。別の器具の数字や、ネットで見かけた比率を持ってくると、この前提が合いません。フレンチプレスの量をペーパードリップに当てはめて濃すぎた、という失敗はここから起きます。
公式の目安でも、すべてが数字で示されているわけではありません。たとえばメリタは、公式の説明で湯温の数値を示さず、豆の種類に合わせて調整するよう案内しています。量も同じで、目安から始めて自分の豆と好みに合わせて動かします。
目安を読むときは、「1杯」の大きさを確かめておきます。メーカーの言う1杯は小ぶりのコーヒーカップを想定していることが多く、マグカップにたっぷり注ぐと足りません。目安のできあがり量と、ふだん使うカップに入る量を見比べておくと、何杯ぶんの欄を見ればよいかが分かります。
量るのは「粉の重さ」と「注いだ湯の重さ」のふたつです
スプーンとカップの目盛りをやめて、どちらもはかりで重さを見ます。
スプーンのすりきりは、豆によって重さが変わります
同じスプーンでも、焙煎の深さと挽き目で入る粉の重さが変わります。
計量スプーンで量れるのは粉のかさで、重さは豆によって変わります。深煎りの豆は焙煎で水分が抜けて膨らんでいるため、同じかさでも浅煎りより軽くなります。豆のままか粉かでも、挽き目が細かいか粗いかでも、スプーンへの詰まり方は違います。
豆を買い替えた直後に味が変わると、豆の個性のせいだと考えがちです。しかし、スプーンに入る粉の重さが変わっただけという場合もあります。はかりで重さを見ていれば、この可能性は消せます。
スプーンの大きさもメーカーごとに違います。別の器具に付いてきたスプーンを使い回すなら、すりきりで何グラム入るかをはかりで確かめておくと安心です。
湯は「できあがった量」ではなく「注いだ量」で数えます
粉が湯を吸うので、注いだ量とカップに落ちる量は一致しません。
湯の量は、注いだ重さで数えます。粉は湯を吸ったまま残るので、カップに落ちるコーヒーは注いだ湯より少なくなります。サーバーの目盛りを見て止める方法だと、粉を増やした日は吸われる量も増え、知らないうちに湯を多く注ぐことになります。
水はミリリットルとグラムがほぼ同じ数字なので、はかりの上で注げば、計量カップを使わずに湯量が分かります。
手順は次のとおりです。
- はかりにサーバーとドリッパーを載せ、表示をゼロに戻します。
- 粉を入れて重さを読み、目安の量に合わせます。
- もういちど表示をゼロに戻します。
- 湯を注ぎ、はかりの表示が決めた湯量になったら止めます。
- 落ちきる前でも、時間がかかりすぎていればドリッパーを外します。
粉を入れたあとにゼロへ戻すのは、湯の重さだけを表示させるためです。戻し忘れると粉の重さが混ざり、杯数を変えたときに計算が合いません。
手順の最後は、ドリッパーに残った湯まで落としきろうとして、渋みが出るのを防ぐためです。注ぐ量は決めたとおりにして、落とす時間は長引かせません。
杯数を変えるときは、粉と湯を同じ割合で増やします
比率はそのままにして、粉の層が厚くなるぶんだけ挽き目で補います。
2杯ぶん淹れるときは、粉と湯を同じ割合で増やします。粉だけを控えめにしたり、湯だけを足して量を稼いだりすると、比率が変わります。量を増やした日に薄くなる原因は、たいていこれです。
ペーパードリップでは、比率を守っても味が変わることがあります。粉が増えると層が厚くなり、湯が通り抜けるのに時間がかかるからです。湯と粉が触れている時間が長くなり、同じ比率でも苦みや渋みが強く出ます。
この場合に動かすのは、量ではなく挽き目です。多めに淹れて重たく感じたら、少し粗くします。少量にして軽く感じたら、少し細かくします。比率を動かして合わせると、次に杯数を戻したときにまた味が変わります。
ドリッパーには、想定された杯数の範囲があります。小さなドリッパーで目安を超える量を淹れると、粉があふれそうになって注ぎ方が乱れます。大きなドリッパーで1杯だけ淹れると、粉の層が薄くなって湯がすぐに抜けます。よく淹れる杯数に合ったサイズを選ぶと、量の調整は楽になります。
味がずれたら、「濃さ」と「出方」を分けて考えます
薄い・濃いは量で直し、苦い・酸っぱいは量を変えずに挽き目で直します。
量で直せるのは濃さだけです。「薄い」と「酸っぱい」、「濃い」と「苦い」は混同しやすいのですが、原因が違います。前者は粉と湯の比率の問題で、後者は粉から成分がどれだけ出たかの問題です。
飲んで感じたことを、次の表に当てはめます。
| 味の感じ方 | 考えられる原因 | 動かすもの |
|---|---|---|
| 水っぽく薄いが、嫌な味はない | 粉に対して湯が多い | 粉を少し増やす |
| 重たく濃くて飲み疲れる | 粉に対して湯が少ない | 粉を少し減らす |
| 薄いのに苦みや渋みが残る | 成分が出すぎている | 量はそのまま、挽き目を粗くする |
| 濃いのに酸味が尖っている | 成分が出きっていない | 量はそのまま、挽き目を細かくする |
濃さを直すときは、湯ではなく粉を動かします。湯を増減させると、カップに入る量まで変わるからです。粉の側を動かせば、いつもの量を飲みながら濃さだけを調整できます。
調整は1回につきひとつだけにします。粉を増やして挽き目も変えると、どちらが効いたのかが分かりません。次に豆を替えたとき、また手探りになります。
薄いのに苦いコーヒーに粉を足すと、苦みまで濃くなります。量を増やしても良くならないときは、表の下のふたつの行を疑い、挽き目を変えます。
器具が変わると、湯の数え方が変わります
比率の考え方は共通で、違うのは湯をどこで量るかと氷の扱いです。
粉と湯の比率で決めるという考え方は、器具が変わっても同じです。変わるのは、器具ごとの目安の数字と、湯を量る場面です。
| 淹れ方 | 湯の量り方 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| ペーパードリップ | サーバーごとはかりに載せ、注いだ重さを見る | 杯数を変えると湯の抜ける時間が変わる |
| フレンチプレス | プレスごとはかりに載せ、注いだ重さを見る | 粉のかさがあるので、容量いっぱいまでは注げない |
| アイスコーヒー | 湯と氷の重さを合わせて湯量と考える | 氷が溶けて薄まるぶん、湯を減らす |
フレンチプレスは粉を湯に浸けておく方式なので、注いだ湯がすべて粉に触れます。湯の抜け方に左右されないため、杯数を変えても味は変わりにくく、比率どおりに量れば結果がそろいます。量の決め方を身につける器具としても向いています。
フレンチプレスでは、容量に注意します。表示されている容量は湯だけを入れたときの量で、粉を入れるとそのぶん湯は入りません。プレスの容量ぴったりのコーヒーを作ろうとすると、あふれます。飲みたい量より少し余裕のあるサイズを選んでおきます。
氷に直接落とすアイスコーヒーは、氷も湯の一部として数えます。ホットと同じ量の湯を注いでから氷を足すと、溶けた水のぶんだけ薄くなります。
迷ったときの決め方を、状況別に挙げます
はかりの有無と淹れる杯数で、最初にやることが変わります。
はかりを持っていない人は、付属のスプーンとサーバーの目盛りで、メーカーの目安どおりに淹れてください。付属品どうしの組み合わせなら、目安からのずれは小さく収まります。豆を替えるたびに味が変わって困るなら、はかりを買うことをおすすめします。
はかりがある人は、粉と湯の両方を重さで量り、目安の比率で3回ほど続けて淹れてみてください。同じ条件で味がそろうと確かめてから、粉の量を動かします。毎回ばらつくうちは、どの調整が効いたのか判断できません。
マグカップでたっぷり飲みたい人は、目安の1杯ぶんに湯を足すのではなく、2杯ぶんの欄を見て粉も増やします。湯だけ増やして薄くなった場合は、これで直ります。
家族のぶんもまとめて淹れる人は、比率を変える前に挽き目を少し粗くしてみます。量を増やしたときの重たさは、多くの場合、粉の層が厚くなったことで起きています。
決めた量は、豆の袋にメモしておきます
粉と湯の重さを書き残すと、豆を替えても同じ手順で合わせ直せます。
好みの濃さが見つかったら、粉の重さと注いだ湯の重さを豆の袋やスマホのメモに残します。書くのはこのふたつと、挽き目の目盛りだけです。
豆を替えたら、前の豆の量から始めて、表に沿って粉だけを動かします。出発点が手元にあれば、数回淹れるうちに好みの濃さが決まります。
