味を決めるのは「蒸らす」「分けて注ぐ」「袋を浸けない」の3点です
ドリップバッグは粉の量と挽き目が決まっているので、家で変えられるのは湯の注ぎ方とカップの選び方だけです。
ドリップバッグには1杯分の粉が入っているので、粉を量る手間がかかりません。粉の量も挽き目(粉の細かさ)も、買った時点で決まっています。家で変えられるのは、湯の注ぎ方とカップの選び方の2つです。
味がぶれたときも、まずこの2つを疑います。湯を勢いよく注ぐと粉が浮き、湯が粉の層を通らずに落ちるので薄くなります。浅いカップを使うと、袋の底が後半にコーヒーへ浸かったままになり、苦みや渋みが出ます。
このあと書く手順は、どれもこの2つの失敗を避けるためのものです。細かい手順を忘れても、蒸らす・分けて注ぐ・袋を浸けない、の3点を守れば大きく外れません。
カップは、袋の底が浸からない深さのものを選びます
袋を掛けたときに袋の底とカップの底が離れているほど、苦みや渋みが出にくくなります。
ドリップバッグはカップの縁に掛けて使います。そのため、袋の底とカップの底の距離が短いと、コーヒーがたまるにつれて液面が袋に届きます。そこから先、粉は湯に浸かったままです。ペーパードリップ(紙のフィルターに湯を通して淹れる方法)だったはずが、浸漬(粉を湯に浸けて成分を出す方法)に近い淹れ方に変わってしまいます。
浸漬そのものはフレンチプレスなどで使われる淹れ方で、悪い方法ではありません。ただ、ドリップバッグの粉は湯が通り抜けることを前提に挽かれています。浸かる時間が延びると、出なくてよい成分まで溶け出して、苦みや渋みが強くなります。
手持ちのカップは、形によって向き不向きがあります。
| カップの形 | 淹れている間に起きること | 向き・不向き |
|---|---|---|
| 深いマグカップ | 液面が袋に届きにくい | もっとも扱いやすい |
| 浅いティーカップ | 後半に袋の底が浸かりやすい | 袋を持ち上げながら淹れるなら使える |
| 口の広いカフェオレボウル | 袋の取っ手が縁に掛からないことがある | 不向き |
| 耐熱ガラスのサーバー | 液面が見えるので量が分かる | 湯量をそろえたいときに向く |
浅いカップしかないときは、袋の底が液面に触れそうになった時点で取っ手をつまみ、袋を少し持ち上げます。深い器で淹れてから、好きなカップに移す方法もあります。
カップは先に温めておきます。湯を少し入れて温め、その湯を捨ててから袋を掛けると、淹れ終わったコーヒーが冷めにくくなります。ドリップバッグは淹れるのに時間がかかり、そのあいだにカップがコーヒーの熱を奪うので、温めておくかどうかで飲むときの温度が変わります。
手順は「粉をならす→蒸らす→分けて注ぐ→早めに外す」の順です
どの工程も粉全体に湯を均等に通すためのもので、順番を入れ替えると薄くなったり雑味が出たりします。
- 湯を沸かし、ぼこぼこと激しく泡立つ状態が落ち着くまで少し待ちます。待つあいだにカップへ湯を少し入れて温め、その湯は捨てます。
- 袋を開ける前に軽く振るか、側面を指ではじいて、粉を袋の底に集めます。
- 点線に沿って上部を切り取り、取っ手を広げてカップの縁に掛けます。
- 袋を軽く揺すって、粉の表面を平らにします。
- 粉全体が湿る程度の少ない湯を、中心から静かに注いで待ちます。粉がふくらみ、表面に細かい泡が出てくれば蒸らしができています。
- ふくらみが落ち着いたら、袋の縁から湯があふれない高さまで注ぎます。湯が引いたらまた注ぎ、これを繰り返します。
- パッケージに書かれた湯量に届いたら、最後まで落ちきるのを待たずに袋を外します。
粉をならしてから蒸らすと、そのあとの湯が粉の層を通りやすくなります
粉のかたよりを先に直し、蒸らしで中のガスを抜いておくと、あとから注ぐ湯が粉全体にしみ込みます。
粉が片側に寄ったまま湯を注ぐと、湯は粉の薄い側を通って先に落ちます。厚い側には湯がほとんど届かず、全体として薄い味になります。袋を振って粉を底に集め、表面を平らにするのは、このかたよりを先に直すためです。
蒸らしは、粉に含まれる炭酸ガスを先に抜く工程です。焙煎した豆はガスを含んでいて、いきなり多くの湯を注ぐと、ガスの泡が湯をはじきます。粉の一部が乾いたまま残り、そこからは成分が出ません。少ない湯で粉全体を湿らせてガスを逃がしておくと、そのあと注ぐ湯がしみ込みやすくなります。
蒸らしの考え方はハンドドリップと同じなので、仕組みをもう少し知りたい方は蒸らしのガイドを参考にしてください。待つ長さは、時計より粉の様子で決めると迷いません。ふくらみが止まり、表面がわずかに沈みはじめたら、次の湯を注ぐ合図です。
最後に袋を早めに外すのは、終わりぎわに落ちてくる液に苦みや渋みが出やすいからです。量はわずかでも、最後の滴まで待つとその分だけ後味が重くなります。
つまずきやすいのは、一度に注ぐ量と袋の傾きです
袋の縁まで勢いよく注いだり袋が傾いたりすると、粉を通らない湯がそのままカップに落ちて薄くなります。
ドリップバッグの袋は小さく、一度に入る湯は多くありません。電気ケトルの太い注ぎ口から勢いよく注ぐと、湯が袋の縁を越え、粉を通らずにカップへ流れ込みます。「表示どおりの湯量なのに薄い」というときは、この流れ込みがよく原因になっています。
袋が傾いても同じことが起きます。取っ手の掛け方が片寄ると袋が斜めになり、低い側の縁から湯がこぼれます。取っ手はカップの縁の向かい合う位置に掛け、袋がまっすぐ下がっているのを見てから注ぎはじめます。
注ぐ勢いを抑えるには、細口のケトルがあると楽です。細口のケトルがない場合は、注ぎ口を袋に近づけ、ケトルを傾けすぎないように注いでみてください。それだけでも湯の量はかなり細かく調整できます。湯を細く安定して注ぐ基本は、注ぎ方の記事で扱っています。
湯量はパッケージの表示に合わせ、量り方を決めておきます
適した湯量は商品ごとに違うので、パッケージに書かれた量を基準にし、毎回同じ方法で量ります。
粉の量や挽き目は商品によって違い、それに合った湯量がパッケージに書かれています。表示より多く注げば薄くなり、少なければ濃くなります。好みの濃さに寄せたいときも、最初は表示どおりに淹れてください。そこから湯を足すか減らすかで調整すれば、比べる基準がぶれません。
困るのは、カップに入った量が見た目では分かりにくいことです。量り方はおもに3つあります。
| 量り方 | やり方 | 向いている人 |
|---|---|---|
| キッチンスケール | カップごとスケールに載せ、表示をゼロに戻してから注ぐ | 毎回同じ味にしたい人 |
| 計量カップ | 必要な湯を先に量り、その湯を全部注ぐ | スケールを持っていない人 |
| カップの目印 | 前に量ったときの液面の高さを覚えておく | いつも同じカップを使う人 |
計量カップで先に量る方法は、注いでいるあいだに湯が冷めていきます。ぬるく感じたら、量った湯をケトルに戻して温め直すか、スケールで量る方法に替えてください。
味がぶれたら、症状から次に変えることを決めます
薄い・苦い・酸っぱい・ぬるいといった症状ごとに、疑う原因と直し方はおおよそ決まっています。
同じドリップバッグでも、注ぎ方とカップで味は変わります。おかしいと感じたら、下の表で症状を探し、原因の候補を確かめてください。
| 症状 | 考えられる原因 | 次に変えること |
|---|---|---|
| 薄い・水っぽい | 湯を勢いよく注ぎ、粉を素通りした | 蒸らしを入れ、注ぐ量を減らして回数を増やす |
| 薄い・水っぽい | 湯量が表示より多い | 湯量を量って表示に合わせる |
| 苦い・渋い | 袋の底がコーヒーに浸かっていた | 深いカップに替えるか、袋を持ち上げる |
| 苦い・渋い | 最後の滴まで待った | 表示の湯量に届いた時点で外す |
| とがった苦みがある | 沸騰した直後の湯を注いだ | 激しい泡が落ち着くまで待ってから注ぐ |
| 酸っぱい・物足りない | 蒸らしが足りず、粉に湯が回っていない | 粉全体が湿るまで蒸らしの湯を注ぐ |
| ぬるい | カップを温めていない | 湯でカップを温めてから淹れる |
直すときは、1回に変えることを1つにしてください。カップを替えて、注ぎ方も変えて、湯量も変えると、味が良くなってもどれが効いたのか分からないままです。次に同じ失敗をしたとき、どこを戻せばよいかも決められません。
同じ症状に原因の候補が2つあるときは、手間の少ないほうから試します。薄いならまず湯量を量り、表示どおりなのに薄ければ注ぎ方を変える、という順です。
ケトルがなくても淹れられますが、少しずつ注ぐ工夫が要ります
やかんや鍋でも淹れられますが、注ぎ口が太いので、湯の量を抑える工夫をします。
やかんは注ぎ口が太く、傾けると湯がまとまって出ます。ゆっくり傾け、注ぎ口を袋の真上に近づけて注いでください。鍋で沸かした場合は、お玉ですくって注ぐと量を調整しやすくなります。
職場の給湯ポットは、ボタンを押すと湯の勢いが強く出るものがあります。袋に直接注がず、いったんマグなど別の容器に受けてから注ぐと、勢いを抑えられます。
迷ったら、手持ちの深いマグから始め、買い足すなら細口ケトルが先です
新しく道具を買う前に深いマグで淹れ方を整え、それでも味がぶれるなら細口ケトル、次にスケールを足します。
ドリップバッグの手軽さを残したいなら、道具を増やす前に手持ちの深いマグで淹れてください。蒸らしと、分けて注ぐことを守るだけで、味のぶれはかなり小さくなります。
それでも薄くなる日があるなら、注ぐ量を安定させられていないことが多いので、細口のケトルを足します。ケトルで注ぎ方が安定しても日によって濃さが違うなら、湯量がぶれています。その段階でスケールを足すと、表示どおりの湯量を毎回守れます。
朝の時間がない日は、カップの目印で湯量を合わせれば足ります。ただし蒸らしだけは省かないでください。省いたときの薄さは、ほかの工程では取り戻せません。
ハンドドリップに進むなら、公式の目安から始めます
ドリップバッグで注ぎ方に慣れたら、粉と湯の量を自分で決めるハンドドリップにそのまま進めます。
ドリップバッグで身につけた、蒸らしてから分けて注ぐ流れは、ドリッパーを使うハンドドリップでもそのまま使えます。違いは、粉と湯の量を自分で決めることです。そのときの出発点には、器具メーカーが出している目安が役立ちます。
メリタジャパンの目安では、メリタの一つ穴式フィルターでペーパードリップする場合、1杯分(125cc)の粉は約8gです。注ぐ湯は140ccとされています。比率にすると約1:17.5です。蒸らしは、粉と同じくらいの量の湯で20〜30秒が目安です。
ドリップ全般の出発点としては、Fellowの公式ブログが1:16という比率を挙げています。
どちらもドリッパーで淹れる場合の目安なので、粉量が決まっているドリップバッグには当てはめないでください。ドリップバッグを淹れるときはパッケージの表示を基準にし、ハンドドリップを始めたら上の目安から調整していくのがよいと思います。
まずは明日の1杯で、深めのマグを使い、蒸らしを入れて淹れてみてください。いつもの味との違いが分かれば、どこを変えれば味が動くのかもつかめてきます。
