公式の目安は「沸かしたてより少し下」です
数値ならFellow公式ブログの約90.6〜96.1℃(自動ドリップ向け)、数値なしならChemex公式の「沸騰が落ち着くまで待つ」が目安です。
「お湯は何度で淹れればいいのか」と調べると、サイトごとに違う数字が出てきて、どれを信じればいいのか分からなくなります。そこで、器具メーカーが自社の公式情報として出している目安を2つ並べました。
| 出典 | 対象 | 湯温の示し方 | 目安 |
|---|---|---|---|
| Fellow公式ブログ | 自動ドリップ(コーヒーメーカー) | 数値の範囲(原文は華氏) | 約90.6〜96.1℃ |
| CHEMEX Corporation | Chemex Classic(手で注ぐドリップ) | 数値なし、待ち方で案内 | 沸騰後、激しい泡立ちが収まるまで待つ |
この2つは対象の器具が違います。Fellowの約90.6〜96.1℃は自動ドリップ向けの値で、手で注ぐハンドドリップ用に出された数値ではありません。ハンドドリップでこの範囲をそのまま正解とするのは、出典の条件からはみ出した使い方です。
それでも、2つの案内は同じ方向を向いています。Fellowの範囲は沸点より低いところにあり、Chemexも沸騰した湯をすぐには注がせません。湯は沸かしたら、少し落ち着かせてから注ぐ。 何度かを細かく決める前に、まずこの点を押さえておけば、大きく外すことはありません。
温度計がなくても、沸騰が収まるのを待てば湯温はそろいます
沸かす、火を止める、泡が収まるまで待つ、という順番を毎回同じにすると、温度計なしでも湯温がぶれにくくなります。
温度計や温度調整つきのケトルがなくても、Chemex公式のやり方なら今日から試せます。毎回同じ手順で湯を用意することがいちばんのポイントです。
- ケトルで湯を沸かします。
- 火を止めます(電気ケトルならスイッチが切れるのを待ちます)。
- ボコボコという激しい泡立ちが収まるまで待ちます。
- 必要なら、湯をドリップポットに移します。
- ドリッパーとサーバーに湯を回しかけて温め、その湯は捨てます。
- 粉をセットして、蒸らしの湯から注ぎ始めます。
なぜこの順番なのか
器具を温めるのは、湯を落ち着かせたあとにしています。先に器具を温めて湯を沸かし直すと、粉に注ぐ湯がまた沸かしたての状態に戻り、待った意味がなくなるためです。
ドリップポットへの移し替えも、湯温を下げる工程の一つです。冷えたポットに湯を移すと、そのぶん温度が下がります。移し替えをする日としない日があると、それだけで湯温が変わります。どちらにするか決めたら、毎回同じにしてください。
つまずきやすい所
よくある失敗は、待ち時間が日によって変わることです。「泡が収まるまで」の見極めが毎回ずれると、温度計を使わない利点がなくなります。泡が静かになったら注ぎ始める、と自分なりの合図を決めておくと安定します。
冬場の冷えた台所や、湯を少しだけ沸かした日は、湯の冷め方が速くなります。いつもと同じように待っているのに味が薄く感じるなら、待ち時間を少し短くしてみると原因が切り分けられます。
湯温は「粉に触れている間」の温度で考えます
ケトルの中の温度より、粉に湯がかかっている間の温度が味を左右するので、注ぐ間に冷める分も考えに入れます。
湯温というと、ケトルの表示や沸かした直後の温度を思い浮かべがちです。けれど味に効くのは、湯が粉に触れて成分を引き出している間の温度です。この2つは同じではありません。
ケトルから出た湯は、注ぎ口を通り、空気に触れ、ドリッパーの壁に熱を奪われながら粉に届きます。ハンドドリップは少しずつ注ぐぶん、自動ドリップより冷めやすい淹れ方です。陶器のドリッパーは温めておかないと熱を吸い、樹脂や金属とは冷め方が違います。ドリッパーの素材を選ぶときは、この熱の奪われ方も見ておくと判断しやすくなります。
ここから言えるのは、同じ温度の湯を使っても、器具や注ぎ方が違えば味は変わるということです。他の人のレシピの温度を真似ても同じ味にならないのは、このためです。自分の器具と手順を固定し、その中で湯温を動かしたほうが、味の変化をつかみやすくなります。
焙煎度によって、湯温を上げるか下げるかが変わります
深煎りは湯温を下げ気味に、浅煎りは上げ気味にすると、それぞれの豆で出すぎ・出なさすぎを防ぎやすくなります。
湯温が高いほど、コーヒーの成分は早く、多く溶け出します。豆の焙煎度によって成分の溶け出しやすさが違うため、同じ湯温でも結果が変わります。
| 焙煎度 | 豆の性質 | 湯温の寄せ方 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 深煎り | 成分が溶け出しやすく、苦味が出やすい | 下げ気味(待ち時間を長めに) | 熱い湯だと苦味やえぐみまで出やすいため |
| 中煎り | 苦味と酸味のバランスがとれている | 公式の目安どおり | まずは基準の湯温で味を確かめるため |
| 浅煎り | 豆が硬く、成分が溶け出しにくい | 上げ気味(待ち時間を短めに) | ぬるい湯だと酸味ばかりが立ち、甘さが出にくいため |
温度計がない場合は、「泡が収まってからの待ち時間」で調整します。深煎りの日は少し長めに待ち、浅煎りの日は泡が収まったらすぐ注ぐ、という具合です。
買う豆の焙煎度がいつも同じなら、この表は一度読めば足ります。浅煎りと深煎りを行き来する人は、豆を替えたときに湯温も見直すと、豆が変わったせいなのか淹れ方のせいなのかで迷いにくくなります。
苦い・酸っぱいときは、湯温だけを片方向に動かします
苦すぎるなら湯温を下げ、尖った酸っぱさなら上げます。ほかの条件は変えず、湯温だけを動かして比べます。
淹れたコーヒーの味がおかしいとき、湯温・挽き目・粉の量を同時に変えると、何が効いたのか分からなくなります。湯温を疑うなら、湯温だけを動かしてください。
| 症状 | 考えられる原因 | 湯温の動かし方 | 湯温で変わらないときに見る所 |
|---|---|---|---|
| 苦い、後味がざらつく | 成分の出すぎ | 下げる(待ち時間を長く) | 挽き目が細かすぎないか |
| 酸っぱい、薄い、物足りない | 成分の出なさすぎ | 上げる(待ち時間を短く) | 挽き目が粗すぎないか、蒸らしが足りているか |
| 酸味はあるが、甘さもある | 豆の個性(浅煎りに多い) | 動かさなくてよい | 好みに合わなければ豆の焙煎度を見直す |
表の3行目は見落としやすいところです。浅煎りの豆は、うまく淹れても酸味が残ります。果物のような明るい酸味に甘さがついてくるなら、抽出は失敗していません。湯温を上げて酸味を消そうとすると、今度は渋みが出ることがあります。
調整は次の順で進めます。
- 豆、粉の量、挽き目、注ぎ方を前回と同じにします。
- 湯温だけを変えます(温度計がなければ待ち時間で変えます)。
- 同じ豆で淹れ比べ、苦味と酸味のどちらが動いたかを確かめます。
- 湯温を変えても味がほとんど変わらなければ、湯温を元に戻して挽き目の調整に移ります。
湯温から試すのは、道具も手間も増やさずに変えられるからです。挽き目はミルのダイヤルを動かすと元の位置に戻しにくく、粉の量は豆を余計に使います。湯温なら待ち時間を変えるだけで済み、うまくいかなくても次の日には元に戻せます。
それでも湯温で動かせる幅には限りがあります。何杯か試して味がほとんど変わらないなら、原因は挽き目や蒸らしにあると考えたほうが早く解決します。
温度調整つきのケトルは、湯温を毎回そろえたい人に向いています
温度調整つきのケトルはなくても淹れられますが、湯温を毎回同じにしたい人や、焙煎度の違う豆を飲み比べたい人には役立ちます。
温度を設定できる電気ケトルがあれば、「泡が収まるまで待つ」の見極めがいらなくなります。浅煎りと深煎りを日替わりで淹れる人や、味がぶれる原因を湯温から外したい人には便利な機能です。
一方で、豆の種類があまり変わらず、待ち方が毎回そろっているなら、すぐに買い足す必要はありません。グースネックケトルを選ぶときに温度調整機能をつけるかどうかは、湯量の調整のしやすさなど、ほかの条件とあわせて決めて問題ありません。
迷ったら、まず「泡が収まるまで待つ」を毎回同じにします
最初は温度の数字を追わず、待ち方を固定してください。味が苦いか酸っぱいかを見てから、湯温を動かすかどうかを決めます。
自分の状況に合わせて、次にやることを選んでください。
- 温度計もケトルの温度設定もない人: Chemex公式のやり方どおり、沸騰が収まるまで待ってから注ぐ手順を固定します。
- コーヒーメーカーを使っている人: Fellow公式ブログの約90.6〜96.1℃が、そのまま当てはまる条件です。湯温を設定できる機種なら、この範囲に合わせます。
- 味が苦い、または酸っぱくて困っている人: ほかの条件を固定したまま、湯温だけを片方向に動かします。それで変わらなければ挽き目を見直します。
湯温は、味を変えられるいくつかの調整のうちの一つです。何度が正しいかを決め切るより、毎回同じ湯温で淹れられる状態をつくるほうが、味の安定にはずっと効きます。
