サーバーの役目は「受ける・量る・注ぎ分ける」の三つです
代わりの器は、この三つのうち自分が必要とする役目を果たせるかどうかで選びます。
サーバーは、落ちてきたコーヒーを受けるだけの容器に見えます。けれど実際には、ほかにも役目を持っています。目盛りを見て飲みたい量で止めること、そして注ぎ口からカップへ分けることです。
三つ全部を求めるのは、2杯以上をまとめて淹れるときです。1杯だけなら、量はカップの大きさで決まり、注ぎ分けもしません。この場合は受ける役目だけで済むので、飲むマグにそのまま落とせば終わります。
代わりの器を探す前に、何杯淹れるかを決めておきましょう。それだけで候補はだいぶ絞れます。
家にある器ごとの向き不向き
熱に耐えられ、目盛りと注ぎ口もそろっている耐熱の計量カップが、代わりの器として扱いやすいです。
台所にありそうな器を、サーバーの役目に照らして並べました。耐熱性は器ごとに違います。表に書いたのは一般的な傾向なので、手元の器の表示を確かめてから使ってください。
| 器 | 熱への強さ | 口の広さ | 量の見え方 | 向く場面 |
|---|---|---|---|---|
| マグカップ(陶器・磁器) | 熱い飲み物用なので耐えるものが多い | ドリッパーの底が縁に掛かれば載る | 外からは見えない | 1杯だけ |
| 耐熱の計量カップ(ガラス・樹脂) | 耐熱表示を確認 | 合うものが多い | 目盛りで見える | 2杯以上、迷ったとき |
| 耐熱ガラスのティーポット | 耐熱表示を確認 | 口が狭いと載らない | 透けて見える | 2杯以上をそのまま食卓へ |
| ジャムなどの空き瓶 | 耐熱でないことが多い | ぴったりはまる場合がある | 透けて見える | 避ける |
| ミルクパン・片手鍋 | 金属なので熱には強い | 広すぎて載らないことがある | 上から覗くしかない | 受ける役目だけ |
| 湯のみ・茶碗 | 陶磁器なら熱には強い | 小さいと不安定 | 外からは見えない | 少量を受けるとき |
計量カップが扱いやすいのは、三つの役目をひとつで受け持てるからです。持ち手があるので熱くても持てて、注ぎ口から注ぎ分けられ、目盛りで量も分かります。ティーポットも条件は近いのですが、口の狭いものだとドリッパーが載りません。
耐熱の表示がない器は使わないでください
熱湯が落ちる器は耐熱表示を確かめてから使います。空き瓶や薄いグラスは割れることがあります。
代わりの器でいちばん怖いのは、割れることです。ガラスは、冷えたところへ急に熱い液体が触れると、内側と外側の温度差に耐えられず、ひびが入ることがあります。ジャムの空き瓶や薄いグラスは熱湯を入れる前提で作られていないものが多く、ドリッパーを載せた状態で割れると、熱いコーヒーと粉が一緒に広がります。
確かめる場所は、器の底やパッケージの表示です。ガラスなら「耐熱ガラス」の表記を、樹脂なら耐熱温度の表示を見ます。樹脂製で、表示された耐熱温度が熱湯より低いものは使いません。表示が見つからない器は、耐熱ではないものとして扱うほうが安全です。
陶器や磁器のマグは、もともと熱い飲み物を入れる器なので、そこまで心配しなくて大丈夫です。それでも冷えたマグにいきなり熱湯を注ぐより、先に湯で温めておくほうが器への負担は減ります。温めておくと、落ちたコーヒーが冷めにくくもなります。
口の広さは、ドリッパーの底が縁にしっかり掛かるかで見ます
ドリッパーを空のまま載せて軽く押し、ぐらつかなければ使えます。湯を注ぐ前に確かめるのが大切です。
ドリッパーの底には、器に載せるための平たい台座が付いています。この台座が器の縁に全周しっかり掛かれば安定します。器の口が台座より大きいとドリッパーは沈み込み、小さすぎると片側に傾きます。
確かめ方は簡単で、粉も湯も入れないまま載せ、上から軽く押してみるだけです。カタカタ動くなら、その器は外します。湯を注いでから傾きに気づいても、熱いドリッパーを持ち上げて置き直すのは危ないからです。
反対に、口がぴったりはまりすぎる器にも注意が要ります。空き瓶でよく起こるのですが、ドリッパーと器のあいだにすき間がないと、中の空気の逃げ場がなくなり、コーヒーの落ちが遅くなることがあります。ドリッパーを少し持ち上げてすき間をつくると落ちが戻るなら、これが原因です。
口が広すぎる片手鍋などは、割り箸を2本渡してその上にドリッパーを置く方法もあります。ただ、箸が転がりやすく揺れるので、注ぐあいだは手元から目を離さないでください。
中が見えない器は、先に水で量の目安をつけておきます
マグのように外から量が見えない器は、淹れる前に水を張って、飲みたい量の位置を覚えておくと溢れません。
マグに直接落とすと、ドリッパーが口をふさいでいるので、どこまで溜まったかが見えません。様子を見ようとドリッパーを持ち上げると滴が垂れますし、気づいたときには縁まで来ていた、ということも起こります。
防ぐには、淹れる前に量の目安をつけておきます。
- 飲みたい量の水をマグに入れ、水面が縁からどのくらい下にあるかを覚える
- その水を捨て、湯を入れてマグを温める
- 湯を捨ててから淹れはじめ、注いだ湯の量がさっきの水と同じくらいになったら注ぐのをやめる
粉が湯を吸うぶん、落ちてくるコーヒーは注いだ湯より少し減ります。初めのうちは控えめに注ぎ、足りなければ次の回から少し増やしてください。
キッチンスケールがあるなら、マグごと載せて重さの増え方を見る方法もあります。中が見えなくても、注いだ量が数字で分かります。計量カップのように目盛りがある器なら、この準備はいりません。
代わりの器で淹れる手順
器の確認、ぐらつきの確認、温める、淹れるの順に進めます。危ない確認を湯を使う前に済ませるための順番です。
- 器の底やパッケージで耐熱の表示を確かめる
- 空のドリッパーを器に載せ、軽く押してぐらつかないか確かめる
- 器に湯を注いで温め、湯を捨てる
- フィルターと粉をセットし、いつもどおりに湯を注ぐ
- 飲みたい量まで落ちたら、ドリッパーを外して受け皿に置く
- 計量カップやティーポットなら、注ぎ口からカップへ分ける
1と2を最初に置いたのは、湯が入ってからでは器を替えられないからです。3で器を温めておくと、コーヒーが冷めにくくなり、器への急な温度変化もやわらぎます。
外したドリッパーからは、しばらく滴が落ち続けます。5の前に、小皿や受け皿を手の届くところに置いておくと、テーブルを汚しません。
湯の温度は、器を替えても変える必要はありません。メリタジャパンは一つ穴式をはじめとする抽出の案内で湯温の数値を示しておらず、豆の種類に合わせて調整するよう案内しています。器を替えたときに気をつけるのは、温度ではなく、器が熱に耐えられるかどうかのほうです。
つまずきやすい点と、その原因
溢れる、垂れる、落ちが遅いの三つは、どれも器の選び方と準備で防げます。
マグから溢れそうになる
中が見えないまま注いだことが原因なので、先に水で量の目安をつけておけば防げます。
前の節の手順で、水面の位置を確かめておけば溢れません。慣れるまでは、注ぐ湯を控えめにしてください。
ドリッパーを外すとテーブルに垂れる
外したあとも滴は落ちるので、受け皿を先に用意しておけば汚れません。
サーバーを使っていても同じことが起こります。器を替えたせいではありません。
落ちるのが遅い
器の口がぴったりはまって空気が抜けないか、粉の挽き目が細かいか、どちらかを疑います。
サーバーで淹れたときと同じ粉で遅くなったなら、器の口を疑ってください。ドリッパーを少し浮かせて落ちが戻るなら、器を替えれば直ります。器に関係なくいつも遅いなら、挽き目の問題です。
迷ったときの選び方
1杯だけならマグへ直接、2杯以上なら耐熱の計量カップが選びやすいです。
1杯だけ飲むなら、サーバーの代わりを探す必要はありません。飲むマグに直接落とし、先に水で量の目安をつけておけば済みます。洗う器もひとつ減ります。
2杯以上をまとめて淹れるなら、耐熱の計量カップがいちばん扱いやすいでしょう。目盛りで量が分かり、注ぎ口から分けられ、持ち手があるので熱くても持てます。お客さんに出すなら、口がドリッパーに合う耐熱ガラスのティーポットも使えます。透けて見えて、そのまま食卓に置けます。
空き瓶や耐熱表示のない器は、口がぴったり合っていても使わないでください。割れたときの後始末が大変ですし、熱いコーヒーでやけどをするおそれもあります。
代わりの器で何回か淹れてみて、2杯以上を淹れる日が多いと分かったら、そこでサーバーを買い足すかを考えれば遅くありません。注ぎ口の形や目盛りのありがたみも、代わりの器を使ってみると分かってきます。
