円錐フィルターは、折り目を1本足せばそのまま使える
ケメックス専用フィルターがないとき、最初に試したいのがハリオV60などの円錐フィルターです。ケメックスのドリッパー部分は円錐に近い形なので、手元の円錐フィルターを折り曲げれば使えます。
折り方の手順
円錐フィルターをケメックスに合わせるには、縫い目を基準に折り目を追加します。まず円錐フィルターを広げ、縫い目の反対側にもう一本折り目を作って四つ折りの状態にします。こうすると形がケメックスの角度に近づき、ドリッパー部分に収まりやすくなります。
フィルターをセットしたら、お湯で全体を湿らせてガラス面に密着させます。このひと手間で、抽出中にフィルターがずれにくくなり、お湯が粉を均等に通ります。
注ぐときの注意点
円錐フィルターはケメックス専用品より薄いため、お湯を一度に大量に注ぐと破れやすくなります。普段より少しずつ、円を描くように注ぐと安定します。
抽出時間も専用フィルターより短くなりがちです。同じ粉の量でも、1分ほど早く落ち切ることがあります(差は豆や挽き目によって変わるので、あくまで目安です)。挽き目を少しだけ細かくするか、粉の量を増やすと、味のバランスを保てます。
家にあるものだけで済ませるなら、無漂白のペーパータオルを2枚重ねで
買い置きがなく、家にあるもので済ませたいときは無漂白のペーパータオルが使えます。キッチンペーパーと呼ばれるものでも構いませんが、香料や漂白剤を含まない製品を選びましょう。
セットの仕方
ペーパータオルを2枚重ねにして、ケメックスのドリッパー部分に沿って敷き詰めます。円錐フィルターのように折り目は作らず、器の内側全体を覆うイメージです。底が二重になるように整え、お湯で濡らして密着させます。
ペーパータオルは繊維が太く、フィルターより目が粗いため、微粉が抜けやすくなります。挽き目は中挽きより少し粗めにしたほうが、雑味の少ない仕上がりになります。
抽出時の特徴
ペーパータオルはお湯の通りが速く、抽出時間が専用フィルターの半分程度になることもあります(これも目安で、紙の厚みや挽き目で変わります)。粉がお湯に触れる時間が短いと、味が薄くなりやすくなります。粉を1.2倍ほどに増やすか、お湯を少し熱めにして成分を引き出します。倍率は目安なので、豆や挽き目に合わせて加減してください。
紙の繊維がコーヒーに混ざるのを心配する人もいます。無漂白で香料のないペーパータオルなら、香りへの影響はあまり気にならない程度です。紙の風味が気になるときは、先に多めのお湯でペーパータオルをすすいでから粉を入れると和らぎます。
ネル生地なら、下処理の手間と引き換えにまろやかな一杯になる
手元にネル生地があるなら、ネルドリップとして使う方法もあります。ネルはフィルターとして古くから使われてきた素材で、ケメックスの厚手のペーパーとは抽出の性質が違います。
ネル生地の準備
未使用のネル生地は、まず煮沸して余分な繊維や糊を落とします。鍋に水を沸かして生地を5分ほど煮て、冷水ですすぎます。煮る時間は目安で、糊の匂いが抜けていなければ少し延ばします。この処理を省くと、布の匂いがコーヒーに移りやすくなります。
ネル生地をケメックスのドリッパー部分に敷き、輪ゴムや紐で口元を固定します。円錐フィルターのように自立しないので、生地がたるまないよう、しっかり張った状態を保ちます。
抽出の違い
ネルは繊維の目が細かく、コーヒーオイルを適度に通しながら微粉は留めます。そのため、ペーパーフィルターよりまろやかで、口当たりの柔らかい味になります。
抽出速度はペーパータオルより遅く、専用フィルターに近い時間がかかります。挽き目は中挽きのままでよく、普段と同じレシピで淹れても味のバランスが崩れにくいのが利点です。
使用後の手入れ
ネルは使い捨てではないため、抽出後の手入れが欠かせません。コーヒー粉をすすぎ落としたら、洗剤を使わず水だけで洗います。洗剤の香りが残ると、コーヒーの風味を損なうからです。
洗い終えたネルは、水に浸けた状態で冷蔵庫に保管します。乾かすと繊維が硬くなり、次に使うときの抽出速度が変わってしまいます。2〜3日ごとに水を替えれば、1週間程度は良い状態を保てます。ただし、これも目安です。匂いやぬめりが出てきたら早めに替えてください。
平底フィルターを押し込むと壁面に隙間ができ、お湯が脇へ逃げる
カリタなどの平底フィルターを代用に考える人もいますが、ケメックスとは形が大きく違うため実用的ではありません。
平底フィルターを無理に押し込むと、底だけが接して壁面に隙間ができます。この状態でお湯を注ぐと、お湯が粉を通らずにフィルターの脇を伝って落ちる「チャネリング」が起きやすくなります。
どうしても使いたいなら、フィルターの口元を折り曲げて円錐に近い形に整えるしかありません。ただ、この加工は手間がかかるうえ、結果も安定しません。円錐フィルターを折るほうが確実で、時間もかかりません。
金属フィルターも使えるが、すっきりした味は期待しにくい
ステンレス製の金属フィルターは、ケメックスのドリッパー部分にはまるサイズなら使えます。ただしペーパーフィルターとは抽出の性質が大きく変わるので、いつもの味に近づけたいなら調整が必要です。
金属フィルターは目が粗く、コーヒーオイルや微粉がそのまま抽出液に混ざります。そのため、ケメックス本来のすっきりした味ではなく、濃厚で舌に残るボディ感のある仕上がりになります。紙・金属・布でフィルターがどう違うかは、コーヒーフィルターの種類と違いで比べています。
このオイル分が好きなら問題ありません。ただ、ケメックスを選んだ理由が「クリアな味」なら、金属フィルターでは期待と違う一杯になりやすいでしょう。
茶こしやザルでは微粉が抜け、ざらついた味になる
急場しのぎに「茶こしやザルで漉せばいい」と考える人もいますが、代用には向きません。
茶こしの目はコーヒー粉より大きく、細かい微粉がそのまま抽出液に混ざります。舌触りがざらつき、雑味も強く出て飲みにくくなります。
ザルも同じで、目の細かいものでもコーヒーの微粉は通り抜けます。そもそもザルはケメックスのドリッパー部分に収まらないので、別の容器で抽出してから移す手間もかかります。それなら最初からフレンチプレスなど別の抽出方法を選んだほうが早いです。
抽出時間の変わり方に合わせて、挽き目か粉量を変える
抽出時間の変わり方によって、調整するところも変わります。以下の数字は目安で、豆や挽き目によって合う量は変わります。まず少しだけ変えて味を見てください。
円錐フィルターなら、挽き目を半段階細かくするか、粉を10%ほど増やします。ペーパータオルなら、粉を20%ほど増やすか、お湯を5度ほど上げます。ネルは専用フィルターに近い抽出時間なので、普段のレシピのままで構いません(初回だけは布が水分を吸う分、お湯を少し多めにします)。理由はそれぞれの項目で書いたとおりです。
フィルターと粉の準備が済めば、あとはいつもどおりに淹れます。淹れ方そのものを確かめておきたいときは、ケメックスの淹れ方を参考にしてください。
迷ったら円錐フィルター。なければペーパータオルかネル
手元の道具と好みの味で選択肢を絞ると決めやすくなります。
円錐フィルターは手に入りやすく、味の変化も小さいので、いちばん使いやすい代用品です。挽き目を少し変えるだけで、普段に近い仕上がりになります。
ペーパータオルは急場の選択肢にはなりますが、抽出は安定しにくくなります。粉量と温度の調整に慣れていないと薄くなりやすいので、時間があるなら円錐フィルターを買いに行くほうが確実です。
ネルは手入れの手間がかかる代わりに、まろやかな味を楽しめます。専用フィルターを切らしたのをきっかけに、ネルドリップを試してみるのもいいでしょう。
平底フィルター、金属フィルター、茶こしは形や抽出の性質が大きく違うので、代用にはおすすめしません。別の抽出器具を使うほうが結果は安定します。
残り20枚ほどで次の箱を頼んでおく
代用するより手間がかからないのは、専用フィルターを切らさないことです。
ケメックスフィルターは1箱100枚入りのものが多く、その場合は毎日1杯淹れても、計算上は3ヶ月以上持ちます。箱の枚数は商品によって違うので、手元の箱で確かめてください。残りが20枚ほどになったら次の箱を注文しておくと、切らす心配が減ります。
通販なら、配送に日数がかかることを見越して早めに手配します。店舗で買う場合も、取り扱いがあるか先に確かめておくと無駄足になりません。
それでも切らしてしまった日は、今ある道具でいちばん近い代用品を選べば十分です。手に入りやすく味の変化も小さい円錐フィルターが第一候補で、手元になければペーパータオルかネルを使います。
