先に結論:「折る・開く・押し当てる」でほぼ決まります
失敗の多くは折り目が甘いことと、紙が壁から浮いていることが原因です。
ペーパーフィルターのセットは、紙を折る、ドリッパーの形に開く、内側から壁に押し当てる、の3つの動きでできています。すき間やずれは、たいていこのどれかが中途半端なときに起きます。
なかでもずれの原因になりやすいのが折り目です。指の腹で軽く押さえただけでは、ドリッパーに入れたときに紙が元の形へ戻ろうとして、壁から浮きます。爪の先や指の関節で、継ぎ目の端から端までしっかり折り目をつけてください。この手間で仕上がりが安定します。
もう一つは、ドリッパーに入れたあと何もせずに粉を入れてしまうことです。紙を入れたら、内側に指を2本ほど添えて壁へ軽く押しつけます。ここまでやれば、ほとんどのすき間は防げます。
ペーパーの形はドリッパーの形に合わせます
台形には台形用、円すい形には円すい用の紙を使います。形が違うと、どう折っても合いません。
いちばん手前のつまずきは、紙とドリッパーの組み合わせが合っていないことです。台形の紙を円すい形のドリッパーに入れると先がとがらず、底に空間が残ります。逆に円すい形の紙を台形に入れると、底の平らな部分に紙が届きません。
| ドリッパーの形 | 使う紙 | 折る場所 | 注意する点 |
|---|---|---|---|
| 台形(底が細長い) | 台形ペーパー | 底の継ぎ目と横の継ぎ目 | 継ぎ目を互い違いに折る |
| 円すい形(底がとがる) | 円すい形ペーパー | 横の継ぎ目だけ | 先端まで紙を押し込む |
| 底が平らなウェーブ型 | 専用のウェーブフィルター | 折らない | ひだをつぶさずに置く |
| ケメックス | ケメックス専用フィルター | 専用の開き方 | 厚い側を注ぎ口に当てる |
同じ台形でも、メーカーによって紙のサイズ表記が違います。大きすぎる紙は上端が余って内側に倒れやすく、小さすぎる紙は湯を注いだ重みで沈みます。手持ちのドリッパーと同じメーカーの紙を使うのが確実です。別のメーカーにする場合は、パッケージで対応するサイズを確かめてください。
台形フィルターのセット手順
底と横の継ぎ目を逆の方向に折ると、紙がまっすぐ立ちます。
台形の紙には、底と片側の横に、紙を貼り合わせた細い帯(継ぎ目)があります。それぞれの継ぎ目をどちらへ折るかで、セットのしやすさが大きく変わります。
- 底の継ぎ目を、手前か奥のどちらかへ折ります。爪で端から端までしっかり折り目をつけます。
- 紙を裏返し、横の継ぎ目を底とは逆の方向へ折ります。
- 紙の口を指で開き、底の角を内側から軽く押して、平らな底の形をつくります。
- ドリッパーに入れ、内側に指を添えて、側面と底を壁へ押し当てます。
- 上から見て、紙の口がドリッパーの縁と平行になっているか確かめます。
互い違いに折るのは、厚みを左右に分けるためです
同じ側に折ると片側だけ厚くなり、紙が傾いて反対側にすき間ができます。
継ぎ目は紙が重なっているぶん、ほかの部分より厚く硬くなっています。底と横を同じ側に折ると、その硬い部分が片側に集まります。ドリッパーに入れると紙が厚いほうから押し返され、反対側が壁から浮きます。
逆方向に折れば厚みが左右に分かれ、紙はドリッパーの中でまっすぐ立ちます。手順2で裏返すのは、この向きを間違えないためです。
底の角を押し広げると、粉が平らに収まります
底が筒のように閉じたままだと粉が中央に寄り、お湯の通り方が偏ります。
折っただけの台形ペーパーは、底が細い筋のように閉じています。そのまま入れると、ドリッパーの平らな底に紙が届きません。粉は中央の細いところにたまり、層が深くなります。
手順3で底の両端を内側から指で押し、角をつくっておくと、紙が底まで沈みます。粉の層も均一になります。底の両端を少し斜めに折り込んでから広げる人もいます。好みで試してください。
円すい形フィルターのセット手順
折るのは横の継ぎ目だけです。先端までしっかり押し込めば、すき間はできにくくなります。
円すい形の紙は継ぎ目が横の1本だけなので、台形より手順が少なくなります。かわりに、紙の先端がドリッパーの穴の上まで届いているかが仕上がりを左右します。
- 横の継ぎ目を、どちらか片側へ折ります。ここも爪でしっかり折り目をつけます。
- 紙の口を開き、内側から指を入れて円すいの形に整えます。
- ドリッパーに入れ、先端が底の穴の真上まで届くよう、指で奥へ押し込みます。
- 継ぎ目の部分を内側から壁へ押し当てます。
円すい形で起きやすいのは、継ぎ目のあたりだけ紙が浮く失敗です。継ぎ目は硬いので、そこだけ壁に沿わずに立ち上がります。手順4で継ぎ目を重点的に押さえておくと、湯がそのすき間を通って抜けることを防げます。
先端が浮いていると、注いだ湯の重みで紙が沈みます。そのとき紙の上端が下がり、ドリッパーの縁から内側へ倒れ込みます。入れた直後に先端まで押し込んでおけば、この沈み込みは起きません。
湯通しはしたほうがいいのか
迷うならしたほうがいいです。紙が壁に密着し、においも減り、器具も温まります。
湯通しは、粉を入れる前に、セットした紙へお湯をひと回しかけておくことです。リンスとも呼ばれます。省いてもコーヒーは淹れられますが、セットの安定という点では差が出ます。
湯通しの利点は3つあります。濡れた紙は壁に貼りつくので、乾いたまま押し当てるよりずれにくくなります。紙のにおいを洗い流せるので、無漂白の茶色い紙を使う場合に向いています。ドリッパーとサーバー(下で受ける容器)も温まります。
欠点は、手間が増えることと、湯通しのお湯を捨て忘れやすいことです。サーバーにたまったお湯を捨てずに抽出を始めると、コーヒーがそのぶん薄まります。湯通しをしたら、粉を入れる前にサーバーを空にしてください。
紙のにおいが気にならず、セットもずれない人なら、毎回しなくても困りません。紙がずれる、すき間ができるという悩みがあるなら、まず湯通しを試してください。手軽で効き目が分かりやすい方法です。
粉を入れてからの扱いで、セットを崩さない
粉は静かに入れて平らにならし、蒸らしの段階で紙が浮いていないかを見ます。
セットがうまくいっても、粉を入れる段階で崩れることがあります。計量スプーンで粉を勢いよく落とすと、紙の口が押されて片側に倒れます。粉は中央へ静かに入れ、ドリッパーを横に軽くゆすって表面を平らにします。
蒸らし(最初に少量のお湯で粉を湿らせ、ガスを抜く工程)は、セットの出来を確かめるのにも向いています。メリタ公式の目安では、蒸らしは粉と同量程度の湯で20〜30秒です(メリタ一つ穴式のペーパードリップの場合)。このあいだに紙の縁を見て、壁から離れている部分がないか確かめてください。
浮いている部分を見つけたら、粉が湿っているうちに、紙の縁の外側を指先で軽く押し戻します。お湯を注ぎ足したあとでは紙が重くなり、直しにくくなります。
うまくいかないときの症状別チェック
症状から原因をたどれば、直す場所は折り目、紙のサイズ、押し当て方のどれかに絞れます。
| 症状 | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 紙と壁のすき間から粉が落ちる | 折り目が甘く、紙が元の形に戻っている | 爪で端から端まで折り目をつけ直す |
| 紙が片側に傾く | 台形の継ぎ目を同じ側に折った | 底と横を逆方向に折り直す |
| 紙の上端が内側へ倒れる | 紙が大きすぎる、または先端が浮いている | サイズを確かめ、先端まで押し込む |
| お湯がすぐ落ちて味が薄い | 壁と紙のあいだを湯が抜けている | 湯通しをして紙を壁に貼りつける |
| 紙のにおいが気になる | 紙を乾いたまま使っている | 湯通しをして、そのお湯は捨てる |
| 注いでいる途中で紙が破れる | 継ぎ目を強く引っぱった、または紙が古く湿気た | 開くときは内側から押し、紙は乾いた場所で保管する |
いくつかの症状が同時に出ている場合は、表の上から順に確かめてください。折り目が甘いと紙の傾きや倒れ込みも起きやすくなるため、最初に折り目を直すだけで、ほかの症状まで消えることがあります。
味が薄い原因は、セット以外にもあります。挽き目が粗すぎたり、粉が少なすぎたりしても、同じように薄くなります。すき間をなくしても味が変わらなければ、次は粉の量と挽き目を見直してください。
ケメックスは開き方が別です
ケメックスでは、紙の厚い側を注ぎ口に当てます。台形や円すい形とは手順が違います。
ケメックスの専用フィルターは、あらかじめ折りたたまれた状態で届きます。Chemex公式の説明では、フィルターは片側が3層になるように開き、紙が重なって厚くなった側を注ぎ口に当てます。注ぎ口のあたりは紙が薄いと吸いついて空気が抜けなくなるので、厚い側をそこへ合わせます。
折り方や代わりに使える紙は、台形・円すい形とは考え方が違うため、この記事では扱いません。ここでは、厚い側を注ぎ口に当てることだけ覚えておけば大丈夫です。
次に淹れるときに試すこと
まず折り目を爪でしっかりつけ直してください。それでもずれる場合は湯通しを足します。
一度に全部を変える必要はありません。次の1杯では、継ぎ目に爪でしっかり折り目をつけ、ドリッパーに入れたあと内側から壁へ押し当てるところまでやってみてください。台形なら、底と横を逆方向に折ることも忘れずに。
それでも紙が浮く、すき間から粉が落ちるという場合は、湯通しを加えます。それも済んで症状が残るなら、紙とドリッパーのサイズが合っているかを確かめましょう。この順で直せば、手間の少ないところから原因をつぶしていけます。
セットが毎回同じ形に決まると、味がぶれたときに「紙のせいかもしれない」と疑わずに済みます。そうなれば、次は粉の量、挽き目、湯の注ぎ方の調整に集中できます。
